ねぇ、見て。空がピンク色だよ。
昔、そんなことを言ったわたしに、右隣のブランコに座っていた男の子は「いや、青色だけど」と驚いた顔をした。
ううん、それは驚いた顔というより、え、なに言ってんのお前、という顔だった。
それすらもかっこよかったんだけど。
でもね、わたしには本当にピンク色の可愛い空が見えていたんだ。ほわほわとしていた心が、さらに蕩けるような。
それこそ、メルヘンの世界に迷い込んで、雲のベッドに寝転がっているような気持ちだった。足をばたばたさせてね。
あれから何年経っただろう。今、わたしの目には逞しい体つきになった君と、ピンク色の空が見えている。
「もういっかい、聞きたい」
胸の中も、目の前も、きらきらしている。わたしはつい、おかわりをねだってしまった。
君がほっぺたをほんのり赤く染めて、首の後ろに右手を回す。
「告白に対して、その返事はないだろ……」
「おねがい。おねがい!」
「~~っ……好きだっ!」
これでいいか、と言いたげな思い切った声だった。君は目を瞑ってしまって、視線が合わなくなる。
「ねぇ、またピンク色の空が見えたって言ったら、信じてくれる?」
私の声には熱気がこもっていた。
腕をぎゅーっと縮めたいような、両手を広げて君に抱き着きたいような、相反する思いが胸の中で暴れている。
足が地面から浮いちゃいそう。
「まだ夕暮れには早いだろ……」
君はそう言って空を見上げた。横顔がピンク色の空に溶ける。
「でも君の顔と同じ色だよ? ううん、君の方がちょっと濃いかも」
空と見比べると、君は目を丸くして、「や、やっぱピンクかもな」と言った。そうしたら、空のせいにできるもんね。
わたしは溢れ出る気持ちを噛み締めるように、一度目を瞑って、君を見る。ほっぺたは緩みっぱなし。
「わたしも、君が好き。ずっと前から、大好きだったよ!」
ピンク色の空の意味。今なら、分かるんだよ。君が教えてくれたの。
きっと、恋する女の子なら見える空。
だってこの空は……恋色だもの!
わたしは君の胸に飛び込んで、空と同じ色に染まったほっぺたに手を伸ばした。
fin.
X(Twitter)企画「# 空の葉」より
(永遠ちゃんが読み上げてくれました!)
声:星空永遠
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