「……さま……おじょう……」
んん……。
眩しい……。
自然と眉根が寄る。
顔を右に背けると大分寝やすくなった。
「お嬢様、朝ですよ」
「ん……?」
誰だろう、この声……。
柔らかくて、聴き心地がいい……。
「ふふ……そんなに心地いい夢を見ていらっしゃるんですか? こちらでも相応の環境を整えなければなりませんね」
「んぅ……」
「お嬢様は紅茶がお好きだと伺いました。角砂糖を2つ、ミルクも入れましょう」
紅茶……。
甘く、まろやかに……?
「フリルのついた、ライトイエローのワンピースをお召しになるのはいかがですか?」
それは、わたしのお気に入りの服……。
「髪はハーフツインテールに。ピンクのリボンで結びましょう」
可愛い……。
それは絶対に可愛い……!
「そうそう、今日の朝食はフレンチトーストだそうですよ」
えっ、なんて素敵な日なの……!?
「ふふ……さぁ、お嬢様。お目覚めの時間ですよ」
そっと掛け布団がめくられる。
わたしはゆっくりとまぶたを持ち上げて、一度瞬きをした。
「あなたは……誰……?」
ベッドカーテンを開けて、背中に日差しを受けながら私を見下ろしていたのは、執事服を着た男の人。
左の髪を耳にかけて、長い前髪を右に流したその人は、にこりと微笑んでお辞儀した。
「槙野紳二(まきのしんじ)と申します。本日付けでお嬢様の専属執事となりました。これからよろしくお願い致しますね」
「槙野……」
わたしに、専属の執事が?
「はい。……主人に仕えることができる日を心待ちにしていました。僕のお嬢様……」
槙野は屈んでわたしの手を取ると、ちゅっと甲にキスをした。
びっくりして体を起こせば、パッチリとした瞳を垂れ目と見紛うほどに柔らかく細めて、跪いたままわたしを見上げる。
「精一杯ご奉仕致します。なんでも、この“私”にご下命くださいね、お嬢様」
どきん、と胸が高鳴る。
頬にじゅわりと熱が滲むのを感じた。
この執事との生活は、わたしの乙女心に、とてもよくない気がする……っ。
fin.
(星空永遠ちゃんがかっこいいお声で槙野のセリフを読み上げてくれたので、動画を作ってみました!)
永遠ちゃん
【執事×お嬢様】改稿版↓
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