本当はね、こんなことしたくないんだよ。私は君といる時間が心地よかった。
幸せというのは、君と共にあるんだと、本気で思っていたんだ。
ザクッ……パララ……
ザクッ……パララ……
頬を伝って、雫が落ちる。君に、まばらな雨が降る。
掘り返した土を、君の体にそっとかけて。
君が、埋まっていく。
誰も、弔う人がいないから。
君が亡くなったことを知っているのは、私だけだから。
嗚咽を堪えて、唇を噛み締めて、君に土と、雫をかける。
「君が生きていたこと、私はずっと覚えているよ。ずっと、ずっと……」
人が本当に亡くなるのは、誰の記憶からも薄れた時。
そんな話を聞いたことがある。だから私は、君のことをずっとずっと忘れない。
fin.
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