top of page

【600字以下】君へ、おやすみ

  • 2023年9月2日
  • 読了時間: 1分

 本当はね、こんなことしたくないんだよ。私は君といる時間が心地よかった。

 幸せというのは、君と共にあるんだと、本気で思っていたんだ。



 ザクッ……パララ……

 ザクッ……パララ……



 頬を伝って、雫が落ちる。君に、まばらな雨が降る。

 掘り返した土を、君の体にそっとかけて。

 君が、埋まっていく。


 誰も、弔う人がいないから。

 君が亡くなったことを知っているのは、私だけだから。

 嗚咽を堪えて、唇を噛み締めて、君に土と、雫をかける。



「君が生きていたこと、私はずっと覚えているよ。ずっと、ずっと……」



 人が本当に亡くなるのは、誰の記憶からも薄れた時。

 そんな話を聞いたことがある。だから私は、君のことをずっとずっと忘れない。



fin.

最新記事

すべて表示
換気扇の向こうには(試し読み)

(※試し読み版につき、途中までの公開となります。全編はアンソロジー【心のひだまり】に収録されていますので、気に入っていただけましたら、入手のご検討をよろしくお願いいたします。詳細は下にて)  カタカタカタ、とキーボードの上に走らせていた指を止める。  知らず、ノートパソコンに近づいていた体を離して、ふう、と息を吐き出した。  テーブルに置いていたマグカップを持ち上げ、ほんのりと苦いコーヒーを一口飲

 
 
 

コメント


© 2023 Yuino's garden / 結之志希

bottom of page