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【600字以下】時計

  • 執筆者の写真: 結之志希
    結之志希
  • 2023年9月2日
  • 読了時間: 1分

 チク、タク、チク、タク……。


 僕は秒針の音が好きだ。針が動く様も、見ていて飽きない。


 友達からは変わった趣味と言われるけど、この心地良さが理解できない周りの方が変わってる。

 そう思うのも、またおかしいと言われるのかもしれない。



 今日もまた、湯気の立つコーヒーを片手に、12で揃う針を見届けた。カーテンが遮っているのは、室内の明かり。


 マグカップに口をつけて、苦味のある液体を舌で味わう。秒針が6まで移動するのを眺めると、しばし目を瞑って、大好きな音に耳を傾けた。


 チク、タク、チク、タク、チク、タク。

 チク、タク、チク、タク、チク、タク……。


 小気味のいい、いつもの音。それが5周した頃にゆっくり目を開けると、パサッと横の方で何かが落ちる音がした。



 あ、大学の課題。


 積み上げた本の上に置いていたA4の紙が、滑り落ちたみたいだ。僕はイスを少し回転させて紙を拾うと、机の上に視線を戻した。


 長針と短針は、揃って真上を向いている。



 ……あれ?


 何か違和感があった気がしたけど、1を通過する秒針を見て、僕はのんびり頬杖をついた。



fin.

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