チク、タク、チク、タク……。
僕は秒針の音が好きだ。針が動く様も、見ていて飽きない。
友達からは変わった趣味と言われるけど、この心地良さが理解できない周りの方が変わってる。
そう思うのも、またおかしいと言われるのかもしれない。
今日もまた、湯気の立つコーヒーを片手に、12で揃う針を見届けた。カーテンが遮っているのは、室内の明かり。
マグカップに口をつけて、苦味のある液体を舌で味わう。秒針が6まで移動するのを眺めると、しばし目を瞑って、大好きな音に耳を傾けた。
チク、タク、チク、タク、チク、タク。
チク、タク、チク、タク、チク、タク……。
小気味のいい、いつもの音。それが5周した頃にゆっくり目を開けると、パサッと横の方で何かが落ちる音がした。
あ、大学の課題。
積み上げた本の上に置いていたA4の紙が、滑り落ちたみたいだ。僕はイスを少し回転させて紙を拾うと、机の上に視線を戻した。
長針と短針は、揃って真上を向いている。
……あれ?
何か違和感があった気がしたけど、1を通過する秒針を見て、僕はのんびり頬杖をついた。
fin.
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