透き通ったガラスのコップ。その中に入った水が半分ほどだったら。“もう半分”かと捉えるか、“まだ半分”と捉えるか、という話があるらしい。
僕はきっと、もう半分かと思うだろう。
そんなことを、実際に半分まで水が減ったコップを眺めながら思う。
「なーにしてるの?」
「水がもう半分か、まだ半分か考えてた」
肩に置かれた手に意識を戻されて、そう答える僕の後ろから、彼女はテーブル上のコップを覗き込む。
「“まだ”半分でしょ!」
「うん、そう言うと思ったよ」
君は僕と正反対の思考を持っているから。
僕は顔を後ろに向けて、微笑んだ。
またひとつ、深みにはまる。君が不思議そうに瞬きをしながら、笑顔を返してくれるから、この恋心は留まるところを知らない。
fin.
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