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【600字以下】水の入ったコップ

  • 執筆者の写真: 結之志希
    結之志希
  • 2023年9月2日
  • 読了時間: 1分

 透き通ったガラスのコップ。その中に入った水が半分ほどだったら。“もう半分”かと捉えるか、“まだ半分”と捉えるか、という話があるらしい。


 僕はきっと、もう半分かと思うだろう。

 そんなことを、実際に半分まで水が減ったコップを眺めながら思う。



「なーにしてるの?」


「水がもう半分か、まだ半分か考えてた」



 肩に置かれた手に意識を戻されて、そう答える僕の後ろから、彼女はテーブル上のコップを覗き込む。



「“まだ”半分でしょ!」


「うん、そう言うと思ったよ」



 君は僕と正反対の思考を持っているから。


 僕は顔を後ろに向けて、微笑んだ。

 またひとつ、深みにはまる。君が不思議そうに瞬きをしながら、笑顔を返してくれるから、この恋心は留まるところを知らない。



fin.

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