気がついたら、どことも分からない真っ白な場所にいた。
首を傾げてみる。さらりと髪が垂れた。でも視界の端に映ったのは、いつもと違う白色だ。
なんでだろう。右手で髪を持ち上げてみる。ひんやりしていた。
じーっと見つめても白い髪は黒くならないので、今度は手を伸ばしてみた。もやに触れているような、不思議な感覚だ。
すり抜けるわたに触れている感じ、というのが一番近いかな。
いや、やっぱりどんな言葉も違う気がする。
動く度になにかがふわふわとまとわりついて、でも邪魔にはならなくて。
てくてくと、壁と床、天井の境目も分からない場所を歩いてみる。
けれども、ごつんと、突然硬い壁につま先がぶつかった。
いてて。
弾き返されるように、後ろに尻もちをついて、目の前を見上げる。他の場所と、なんにも変わらない。
透明な、壁?
【――? ――――――……――――、――――――――――――】
その時、なにかが喋った。声も聞こえないし、言葉も分からないのに、何故かそう感じる。
ふと、眠気に襲われて、まぶたが重くなった。
うと、うと。あぁ、もうだめだ。耐えられない……。
――――――――
―――――
―――
「ひかりー? まだ寝てるのー?」
気がついたら、布団の中にいた。重たい目をこすって時計を見ると、7時17分。
大変。遅刻しちゃう。
わたしは慌てて、布団の中から抜け出した。
fin.
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